プロ野球の名球会とは?入会条件やメンバー、候補選手、拒否した選手

プロ野球の「名球会」についてのお話です。

  • 名球会とは、どんな会?
  • 名球会の入会条件は?
  • 名球会のメンバーは誰?
  • 名球会入りが近い選手は誰?
  • 名球会入りは拒否できる?

など、名球会に関する情報をまとめました。

名球会とは

名球会は、野球関連の組織です。野球に関連する社会貢献等を目的に活動しています。

  • 正式名称「日本プロ野球名球会」
  • 法人名「一般社団法人 日本プロ野球名球会」
  • 英名「Golden Players Club」

1978年7月24日に創設され、2024年1月時点で投手18人、野手50人が名球会に在籍しています。

名球会のシンボルマーク出典:名球会のシンボルマーク

日本プロ野球名球会は、日本プロ野球界の裾野を広げることと社会の恵まれない方々への還元を目的に、1978年7月24日に創設されました。

引用: 日本プロ野球名球会の組織概要【公式】

名球会・概要

1978年 創設
投手8名、野手10名、計18名で発足
1981年 法人化
株式会社→法人へ
2010年 社団法人化
法人→ →般社団法人へ
※一般社団法人 日本プロ野球名球会
野球観戦、解説くん

40年以上の歴史あり。

顧問 長嶋 茂雄
王 貞治
山本 浩二
理事長 古田 敦也
副理事長 野村 謙二郎
佐々木 主浩
理事 柴田 勲
東尾 修
谷繁 元信
宮本慎也
所在地 東京都中央区京橋

※敬称略

野球観戦、ありがとう

伝説級の野球選手が、重役に名を連ねています。

名球会の入会条件

名球会の入会条件

名球会は誰でも加入できるわけではなく、入会には条件が設けられています。

名球会の入会条件(入会資格)は以下の通り。

  • 投手:日米通算200勝以上
  • 投手:日米通算250セーブ以上
  • 野手:日米通算2000安打以上

※日本プロ野球(NPB)に所属経験があるプロ野球選手・元プロ野球選手が対象
※昭和生まれ以降のプロ野球選手・元プロ野球選手が対象
【例外:特例入会制度】名球会会員の4分の3以上の賛成を得た選手が入会可能

野球観戦、挨拶

外国人選手も、日本のプロ野球でプレイした経験があれば、名球会の資格対象者となります。




メジャーリーグでの成績も合算される

名球会の記録は日米通算

投手200勝以上または250セーブ以上、野手2000安打以上の記録は、メジャーリーグ(MLB)での成績も合算されます。

独立リーグや社会人野球など、メジャーリーグ以外の野球機構の成績は合算されません。

記録に合算される
  • メジャーリーグ(MLB)
    ※NPBからMLBへ渡った場合(日米通算)
記録に合算されない
  • 海外リーグ(韓国、台湾プ、オーストラリアなど)
  • 独立リーグ
  • 社会人野球
  • ※MLBからNPBへ来日した場合(米日通算)

日米通算記録は合算、米日通算記録は合算しない

名球会は米日通算は合算しない

日本のプロ野球チームに所属し、NPB12球団(セ・リーグ、パ・リーグの球団)でプレイしたあと、海を渡りメジャーリーグに挑戦した場合の成績は、日米通算記録として加算されます。

しかし、先にメジャーリーグで活躍してから日本プロ野球の球団に所属した場合、記録のスタート地点は日本プロ野球からカウント開始となります。

記録に合算される 日米通算 NPBからMLBへ渡った場合
記録に合算されない 米日通算 MLBからNPBへ来日した場合

 

【MLB→NPB】で、通算成績での名球会入りが認められなかった前例:アレックス・ラミレス選手

日本のプロ野球(NPB)でプレーする前にメジャーリーグに在籍していたラミレス選手(ラミちゃん)は、2012年に米日通算2000安打を記録したものの、そのときは名球会の入会資格を満たさないとされ、名球会入りできませんでした。

しかしその後、2013年に日本での成績のみでの通算2000安打を記録したため、名球会の資格認定を受けました。

野球観戦、解説くん

「日米通算成績」というのがミソ。「米日通算」の記録では、名球会の入会条件を満たせません。

昭和生まれ「以前」のプロ野球選手は入会できない

名球会の入会資格を持つのは「昭和生まれ以降」のプロ野球選手、元プロ野球選手です。

昭和より前に生まれた選手は、残念ながら入会資格がありません。

200勝以上、2000安打以上の記録を所持していても、大正生まれ、明治生まれの野球選手は対象外となっています。

200勝以上の投手
杉下茂 通算215勝 大正14年
別所毅彦 通算310勝 大正11年
野口二郎 通算237勝 大正9年
中尾硯志 通算209勝 大正8年
藤本英雄 通算200勝 大正7年
ヴィクトル・スタルヒン 通算303勝 大正5年
若林忠志 通算237勝 明治41年
2000安打以上の野手
川上哲治 通算2351安打 大正9年

※敬称略

名球会の入会条件に「ホームラン数」は入っていない

名球会の入会条件に「ホームラン数」は入っていない

名球会の入会資格を、もう一度見てみましょう。

  • 投手:200勝以上
  • 投手:250セーブ以上
  • 野手:2000安打以上

野手の入会条件は「安打数」のみが対象で、ホームランの本数は名球会の条件に入っていません。

今後、ホームラン数も入会の条件として含められる可能性もありますが、現状ではこの基準になっています。

投手の入会条件は賛否両論あり

名球会に入会するための投手の条件「200勝以上or250セーブ以上」は、「厳しすぎる」とする声と「甘すぎる」とする声が賛否両論で混在しています。

昨今のプロ野球は、投手の分業制が進み、先発投手が長いイニングを投げる試合が減りました。

同時に「先発から抑えへ転向」「中継ぎから先発へ転向」など、配置換えによる記録の断裂が起きうるため、コンスタントに勝利だけを重ねる、あるいはセーブ数を積み上げるのが難しい状況です。

また、勝利数やセーブ数はチーム事情も大きく影響します。

例えば、ロースコアで守り勝つ作戦で戦うチームの守護神はセーブ数を伸ばしやすい傾向があり、反対に低迷しているチームの投手は勝ち星を積み上げるのが困難になります。

野球観戦、落ち込む

身もふたもない言い方をすると「弱いチームに所属すると、名球会入りが遠のく」

また、250セーブを「多い」とするか「少なすぎる」とするか? も、たびたび議論される話題です。

名球会の条件:250セーブは「多すぎる」の声

惜しくも、250セーブに届かず引退した代表的な選手を見てみましょう。

投手名 通算記録 あと何セーブ?
デニス・サファテ 日米通算234S ▲16S
馬原 孝浩 通算182S ▲68S
赤堀 元之 通算121S ▲129S

※敬称略

球界を代表する名投手の名がズラリと並びますが、250Sには届いていません。

名球会入りの条件が200セーブであれば、サファテ投手も名球会入りしていました。

また、先発や抑えなど、各ポジションを担った馬原投手の通算成績は、23勝・182セーブです。

もし馬原投手が、はじめからクローザーだけをつとめていれば、250セーブ達成していた可能性もあり、今頃、名球会のメンバー名簿に載っていたかもしれません。

名球会の条件:250セーブは「少なすぎる」の声

いっぽうで、名球会の条件「250セーブ以上」は少なすぎるとの声もあります。

実際に、250セーブ以上を積み上げ、名球会入りを果たした投手は、現状3名のみ。

  • 岩瀬仁紀 投手
  • 佐々木主浩 投手
  • 高津臣吾 投手

そして、岩瀬氏、佐々木氏、高津氏の3名は300セーブ以上を上げています。

名球会入りの条件を250セーブ以上としても300セーブ以上としても、名簿のリストは変わりません。

長年にわたり、抑えポジションの重責を全うしたクローザーに敬意を表し「250セーブでは少なすぎる」とする声もあがっています。

【追記】2023年10月2日、平野佳寿投手達成

特例入会制度:上原浩二氏と藤川球児氏

名球会では、理事会で推薦を受け、名球会会員の4分の3以上の賛成を得た選手を対象に、特例で入会が認められる「特例入会制度」があります。

特例枠で名球会に入会したはじめての選手は、上原浩二氏と藤川球児氏のおふたり。

上原投手も藤川投手の日米通算成績は名球会の基準を満たしてはいませんでしたが、200勝や250セーブの記録に劣らぬ活躍があったため、「むしろ名球会入りしていないのがおかしい」との声も多く、このたび無事、名球会の名簿に名を連ねる結果となりました。

名球会のメンバー一覧

※2022年シーズン終了時点

キャッチコピーは、名球会公式サイト参照。

出典:名球会

200勝達成

投手名 通算勝利数 名球会のキャッチコピー 達成年
米田哲也 350勝 鉄人投手 1966年
小山正明 320勝 ハリの穴を通す制球力、精密機械 1964年
鈴木啓示 317勝 草魂、300勝の速球王 1977年
山田久志 284勝 下手投げ最多勝の大エース 1982年
東尾修 251勝 内角球の魔術師 1984年
工藤公康 224勝 日本一の優勝請負人 2004年
山本昌広(山本昌) 219勝 無敵のスクリューボール 2008年
北別府学 213勝 史上最高の投球術をもつ大エース 1992年
江夏豊 206勝 優勝請負人、奪三振王 1982年
黒田博樹 203勝
(日124/米79)
男気溢れる広島カープの永久欠番 2016年
野茂英雄 201勝
(日78/米123)
メジャーのパイオニア 2005年
平松政次 201勝 脅威のカミソリシュート 1983年

 

250セーブ達成

投手名 通算セーブ数 名球会のキャッチコピー 達成年
岩瀬仁紀 407S 史上最強の左のクローザー 2010年
佐々木主浩 381S
(日252/米129)
魔球フォークを操る大魔神 2000年
高津臣吾 313S
(日286/米27)
世界を知るリリーフエース 2003年
平野 佳寿 ※現役 「一所懸命」で球団に恩返し 2023年

 

2000安打達成

選手名 通算安打数 名球会のキャッチコピー 達成年
鈴木一朗
(イチロー)
4367安打
(日1278/米3089)
孤高の天才プレーヤー 2004年
張本勲 3085安打 日本一の3000本安打の強打者 1972年
王貞治 2786安打 世界のホームラン王 1974年
松井稼頭央 2705安打
(日2090/米615)
俊足打者のスイッチヒッター 2009年
青木宣親 (日※現役/米774) 日本屈指の安打製造機 2017年
松井秀喜 2643安打
(日1390/米1253)
日米四番打者 2007年
福本豊 2543安打 世界の盗塁王 1983年
金本知憲 2539安打 片手一本でヒットを放つ鉄人 2008年
立浪和義 2480安打 最多二塁打記録の好打者 2003年
長嶋茂雄 2471安打 燃える男、ミスタープロ野球 1971年
土井正博 2452安打 史上最年少の四番打者 1977年
福留孝介 2450安打
(日1952/米498)
メジャーを知る、夢貫の天才 2016年
石井琢朗 2432安打 マシンガン打線の火付け役 2006年
山本浩二 2339安打 ミスター赤ヘル 1984年
井口資仁 2254安打
(日1760/米494)
栄光への星を持つ快男児 2013年
坂本勇人 ※現役 巨人軍の若きチームリーダー 2020年
新井貴浩 2203安打 熱い思いと全力プレー 2016年
内川聖一 2185安打 球界随一のミート技術 2018年
若松勉 2173安打 小さな大打者 1985年
稲葉篤紀 2167安打 ドームを揺らすチームリーダー 2012年
秋山幸二 2157安打 三拍子揃ったホームラン王 2000年
広瀬叔功 2157安打 韋駄天、南海の一番打者 1972年
宮本慎也 2133安打 鉄壁の守備 2012年
阿部慎之助 2132安打 巨人軍史上最高の捕手 2017年
清原和博 2122安打 甲子園のホームラン王 2004年
小笠原道大 2120安打 豪快な侍のフルスイング 2011年
前田智徳 2119安打 誰もが認める天才打者 2007年
谷繁元信 2108安打 強気のリードと強肩の球界屈指の名捕手 2013年
中村紀洋 2106安打
(日2101/米5)
いてまえ打線の主軸 2013年
鳥谷敬 2099安打 努力の「鉄人」 2017年
古田敦也 2097安打 ID野球の名捕手 2005年
松原誠 2095安打 理論派巧打者 1980年
栗山巧 ※現役 ライオンズ生え抜きの“巧”打者 2021年
山崎裕之 2081安打 巧打、巧守の職人技 1983年
藤田平 2064安打 虎の巧打者 1983年
有藤通世 2057安打 ロッテ日本一の立役者 1985年
加藤秀司 2055安打 負けん気の勇者 1987年
和田一浩 2050安打 遅咲きの打撃職人 2015年
荒木雅博 2045安打 世界クラスの守備範囲 2017年
小久保裕紀 2041安打 強打のチームリーダー 2012年
新井宏昌 2038安打 職人、安打製造機 1992年
野村謙二郎 2020安打 走攻守抜群のリーダー 2005年
柴田勲 2018安打 スイッチヒッターの草分け 1980年
アレックス・ラミレス 2017安打 愛されるパフォーマンス 2013年
田中幸雄 2012安打 努力の大型内野手 2007年
駒田徳広 2006安打 奇跡の満塁男 2000年
福浦和也 2000安打 幕張の安打製造機 2018年
大島洋平 ※現役 ドラゴンズ一筋 稀代のヒットメーカー 2023年

 

特別枠

選手名 通算成績 名球会のキャッチコピー 入会年
上原浩治 日:112勝33S
米:22勝/95S
ワールドクラスの雑草魂 2022年
藤川球児 日:60勝243S
米:1勝/2S
日本が誇る火の玉ストレート 2022年




名球会に近い選手・候補者

名球会に近い選手・候補者

名球会への入会が近い現役選手を、一部紹介します。

投手:200勝以上に近い候補者

  • 田中将大投手
  • ダルビッシュ有投手
  • 石川雅規投手
  • 前田健太投手
  • 和田毅投手
  • 涌井秀章投手

投手:250セーブ以上に近い候補者

  • 山崎康晃投手

野手:2000本安打以上に近い候補者

  • 中島宏之選手
  • 松田宣浩選手
  • 浅村栄斗選手
  • 中村剛也選手
  • 丸佳浩 選手

名球会入りは拒否できる?

名球会入りは拒否できる?

名球会入りは強制ではありません。

よって、投手200勝or250セーブ、野手2000安打を達成しても、入会の意思がなければ辞退(拒否)もできます。

名球会入りを拒否した前例:落合博満

オレ流野球で独特の世界観と卓越した打撃で観客を魅了した落合博満氏は、名球会入りの条件を満たしつつも、名球会入りを辞退しました。

当時のニュース記事を紐解くと、落合氏が以下のようにコメントしています。

任意の団体だから入る自由もあれば、辞退する自由もある。名球会を目指して野球をやってきたわけではない。ゴールはまだ先だ

※現在、このコメントの記事は閲覧不可能です。

落合氏は、学生のころから野球界の理不尽な上下関係に難色を示していました。

今となっては「三冠王」として、打撃の神様的存在まで上り詰めましたが、当時は打撃面でも名球会に名を連ねる先輩諸氏から「あれでは打てない」など、否定的な考えを押し付けられ、反感を覚えていたそうです。

三冠王に輝いたあとも、名球会に対する気持ちは変わらなかったようで、

「数字(成績)だけが入会条件の尺度とされるのはおかしい」
「名球会だけが一流選手ではない」

と、名球会入りを固辞しました。

【2023年8月追記】

【真相】落合博満が名球会を辞退した経緯を語る

2023年8月、落合博満さんご自身のyoutubeチャンネル内で、名球会を辞退した理由について語りました。

「任意の団体なので、断る権利もある」
「名球会に入らなくても、偉大な選手はたくさんいる」
「(名球会のイベントに参加せず、)オフはゆっくり備えて、翌シーズンの下準備をしたい」
「(名球会はいい意味で)選手の墓場」

など、独特のオレ流表現を用いて、加入辞退の意思表示をされています。また、

「落合博満野球記念館を、名球会が(無償で)譲り受けたい」

といった提案もされたとのこと……。当時のとんでもないやりとりの経緯を明かしてくれました。

名球会のメリット|どんないいことがある?

名球会のメリット|どんないいことがある?

名球会に入ると、どんなメリット、どんないいことがあるのでしょうか? ざっとまとめてみました。

  • 野球界のレジェントとして、名が刻まれる
  • 入会ブレザーが贈呈される
  • 名球会のイベントに参加できる
野球観戦、解説くん(疑問)

「金一封」のような、金銭的メリットは聞く限りではありません。

メリット①野球界のレジェントとして、名が刻まれる

名球会は、投手200勝or250セーブ、野手2000安打と、長い期間をかけて記録・成績を積み上げた結果、ようやく入会資格が得られる特別な組織です。

野球界を支えてきたレジェンド選手――長嶋茂雄氏や王貞治氏、イチロー氏……など、多くの名プレイヤーが名を連ねていることから、レジェンドの証明、名選手の象徴として球史に名が刻まれます。

メリット②入会ブレザーが贈呈される

名球会に入会する際の恒例行事として「名球会ブレザー授与式」が開かれます。

ニュースなどでもピックアップされるので、こんな光景を目にした経験がある人もいるかもしれません。

名球会に新加入する選手は、先輩の名球会会員から「ブレザー」を着せてもらえます。

西武 栗山巧 選手、通算 2000安打達成 名球会 ブレザー授与式

メリット③名球会のイベントに参加できる

名球会では、定期的にイベントを開催しています。

名球会は青少年の野球支援や社会貢献のために、野球教室やチャリティオークション、講演会などの活動していますが、その他、

  • 名球会メンバーだけが参加できるチャリティゴルフ
  • 名球会メンバー内で対戦する「名球会ベースボールフェスティバル」
  • 「名球会ベースボールクラシック」

などの野球の試合にも出場できます。

名球会ベースボールフェスティバル

出典:公式|名球会ベースボールフェスティバル

名球会ベースボールクラシック

出典:公式|名球会ベースボールクラシック

野球観戦、嬉しい

名球会のレジェンド選手が競う、オールスター戦のような感じ!

野球界を支えてきた大御所プレイヤーとお話する機会も増えるため、野球界とのつながりも深めやすく、情報収集や今後の活動(解説業、コーチ職など)の助けになる、などのメリットもあります。