プロ野球の警告試合とは。
どんな状況下で宣言されるのか、警告試合になるとどうなるかを事例、前例も含め解説。
警告試合と没収試合の違いも。
警告試合とは
野球の「警告試合」とは、デッドボールの応酬や乱闘など、危険なプレイを抑制するための仕組み。
「警告試合」を発するのは、審判員です。
正々堂々と野球で勝負するのではなく、故意に死球を与えて相手チームの選手にダメージを与える、当てられた仕返しに攻守交代後、わざと「当てる」など、不毛な危険行為の連鎖が続きそうな雰囲気になったとき、審判員から警告試合が発令されます。
実際にデッドボールを与えていなくとも、投手が打者の背中を抜くような球を投げたり、頭部を目がけて投球した危険球、タックルのようなスライディング、スパイクの刃を相手に当てるような走塁、ヤジ、暴言、挑発行為、態度が悪いなども報復行為と判断されます。
警告試合は、両チームに発せられます。
先にデッドボールを与えたのはどちらのチームか、態度が悪いのは誰かなどは関係なしに、警告試合は両チームに適応されます。
公認野球規則6.02d(9)
投手の危険行為(中略)→打者を狙って投球
公認野球規則6.02d(9)
審判員は反則行為が起きそうな恐々であると判断したときには(中略)いつでも小チームに警告を発することができる。
警告試合になるとどうなる?
審判員から警告試合が出されたあとに危険なプレイを行った選手は退場。場合によっては危険行為を行った監督も退場になる可能性があります。
危険行為の「理由」は問わず、退場が宣告されます。
警告試合が出された後は、危険行為の「理由」を問わず退場が言い渡されます。よって、わざとではないデッドボールでも、一発退場になります。
インコースギリギリに攻めてユニフォームをかすった場合でも退場が下されます。
警告試合が宣言されたあとも通常通り試合は続きますが、危険行為をジャッジする審判員の目が厳しくなるイメージです。
警告試合の事例
NPB(日本のプロ野球)で警告試合が出た事例はいくつかあります。
同一カード3連戦中、2戦で死球6個→3戦目(翌日)の試合を警告試合に
2005年5月15日(警告試合)
西武ライオンズ - 読売ジャイアンツ
状況
- セ・パ交流戦
- 同一カード3連戦の1日目、2日目に、合計6個のデッドボールがあった
- 2戦目に、西武・和田一浩選手への死球
- 巨人・タフィローズと西武のホセフェルナンデスが睨み合う
- 険悪なムードのままゲームセット
審判団がカード3戦目(翌日)の試合をパ・リーグ アグリーメントに基づき警告試合とした
警告試合宣言→通常のデッドボールで危険球退場
2007年6月11日(警告試合)
東京ヤクルトスワローズ - 東北楽天ゴールデンイーグルス
状況
- セ・パ交流戦
- ヤクルトの遠藤政隆投手が、楽天のリック・ショート選手、山崎武司選手の2人の打者に初球死球
- 両チーム、もみ合いに発展
- 球審が警告試合を宣告
- 試合再開後、楽天の松本輝投手がヤクルトの城石憲之選手にデッドボールを与える
→球審は松本輝投手に「危険球退場」を宣告
ふつうのデッドボールで危険球退場となった、はじめての警告試合
同一カードで2試合連続の警告試合
①2010年5月4日(警告試合)
②2010年5月5日(警告試合)
オリックス・バファローズ - 福岡ソフトバンクホークス
状況①2010年5月4日
- ソフトバンク松田宣浩選手が初回満塁弾を放つ
- →その後、松田選手は2打席連続死球
- 8回表にオリックス小松聖投手がソフトバンク ホセ・オーティズ選手にデッドボールを与える
- 怒ったオーティーズが小松投手に詰め寄る
- 両チームがベンチから飛び出す
- 塁審が警告試合を宣告
状況②2010年5月5日
- 7回裏にソフトバンクの甲藤啓介投手が、オリックス グレッグ・ラロッカ選手に、この日2個目のデッドボールを与える
- 両チームの揉み合いに発展
- 岡田監督と秋山監督が口論
- 球審が警告試合を宣言(2日連続)
2日続けて、警告試合
1イニング3死球で警告試合
2015年5月8日(警告試合)
オリックス・バファローズ - 北海道日本ハムファイターズ
状況
- 9回表、オリックスの塚原頌平投手が、日ハムの中田翔選手、大野奨太捕手、岡大海選手の3者にデッドボールを与える(1イニングで3つ)
- 3回目の死球時に、日本ハム柏原コーチをはじめ数名が飛び出す
- その後、両チームが一斉にグラウンドへなだれ込む
- 球審が警告試合を宣告
【余談】オリ山本由伸投手→塚原投手へのメッセージ
上記の試合で1イニング3死球を与えたオリックス塚原投手。
1イニング3死球はプロ野球9人目、パ・リーグ6人目のタイ記録となりました。
数年後、2020年7月に同じくオリックスの後輩、山本由伸投手が試合中にコントロールを乱し、同様に1イニング3死球の記録を作ります。
その後、山本由伸投手から塚原さんへ送ったとされるメッセージがこちら。
山本由伸投手は「塚原投手以来の1イニング3死球」であるニュース記事を、わざわざご本人の塚原さんへ送ったそうです。
山本由伸投手の鬼メンタル!
警告試合、2投手・1コーチが退場
2019年8月13日(警告試合)
埼玉西武ライオンズ - オリックス・バファローズ
状況
- 西武・齊藤大将投手が初回にデッドボールを与える
- 西武・齊藤大将投手が3回表にのデッドボールを与える(2度目)
- 西武・森脇亮介投手が4回表に若月健矢捕手にデッドボールを与える(3度目)
- 両チームの選手が飛び出す、もみ合いに発展
- 佐竹学一塁コーチは暴力行為により退場(退場1人目)
- 球審が警告試合を宣告
- オリックス・田嶋大樹投手が4回裏に、西武 森友哉捕手にデッドボールを与え退場処分(退場2人目)
- 西武・平良海馬投手9回表に、オリ福田周平に押し出しデッドボールを与え退場(退場3人目)
1試合で退場者が3名も……
3打席連続死球/ファームの警告試合
2015年5月6日(警告試合)
東京ヤクルトスワローズ - 横浜DeNAベイスターズ
状況
- ファームの試合
- DeNAの加賀投手、土屋投手、平田投手が、ヤクルトの谷内亮太選手に3打席連続でデッドボールを与える。
- 3回目の死球時に、両軍の数名がグラウンドへ
- 警告試合宣告
一触即発の雰囲気でしたが、谷内はそのまま1塁へ向かったため、乱闘には繋がりませんでした
ビッグボス、一触即発の雰囲気を変える(警告試合)
2022年8月6日(警告試合)
オリックス・バファローズ - 北海道日本ハムファイターズ
状況
- 日ハム・田中瑛斗投手が初回にオリックス杉本裕太郎選手にデッドボールを与える
- 日ハム・田中瑛斗投手が3回にオリックス杉本裕太郎選手にデッドボールを与える
- (オリ杉本は、7月19日の同一カードでも、田中投手にぶつけられていた)
- オリ杉本、怒ってマウンドへ歩み寄る
- 両チームがベンチから飛び出す
- ビッグボスが杉本選手に直接謝罪
- オリ杉本、笑顔になる
警告試合が発動されたものの、ビッグボス効果により殺伐とした雰囲気はなくなりました
警告試合と没収試合の違い
警告試合 | 報復行為や危険プレイ、乱闘などを抑制するための仕組み |
没収試合 | 試合の継続、あるいは試合の開始が困難な状況になったとき、トラブルを持ち込んだチームを「負け」にする規則 |
警告試合は、両軍のにらみ合いを防ぎ、報復合戦に発展しないよう、審判員が宣言します。
いっぽうで「没収試合」は、試合の継続、あるいは試合の開始が困難な状況になったとき、試合できない原因を持ち込んだチームを「負け」にする規則です。たとえば、
・いっぽうのチームが遅刻し、試合開始に間に合わなかった
→試合に遅れたチームが強制的に敗戦となる
・警告試合後も、しつこく反則行為を続けた
→反則行為を続けたチームが強制的に敗戦となる
・試合を故意に長引かせる、短くするなど、策を用いた
→策を用いたチームが強制的に敗戦となる
・審判員の判定を不服とし、試合再開を拒んだ
→試合再開を拒んだチームが強制的に敗戦となる
・退場が宣告されたのに、なんやかんやでグラウンドやベンチに残り続けた
→退場しなかったチームが強制的に敗戦となる
参照:公認野球規則7.03「フォーフィッテッドゲーム(没収試合)」
トラブルの火だねを作り、試合継続を困難にしたチームが強制的に敗北するのが「没収試合」