プロ野球の「制限選手」「制限選手公示」について、なるべく分かりやすく解説します。
ジャリエル……どこいった……
2023年3月末――WBCでワキャワキャしていた優勝フィーバーな雰囲気もひと段落し、開幕に向けて各チームが最終調整に入っています。
そんな折、飛び込んできた、寝耳に水のニュース記事。
中日・ジャリエル・ロドリゲス亡命か?
亡命報道の中日・ロドリゲス…「移籍は避けられないように思う」MLB専門家のAKI猪瀬さんも懸念#ジャリエル・ロドリゲス #dragons #ドラゴンズ #中日ドラゴンズ https://t.co/FGSMHggXkK
— 中日スポーツ (@chuspo) March 29, 2023
あぁ、なんということでしょう。
WBCの隙をついて、中日ドラゴンズのジャリエル・ロドリゲスが帰国しない(メジャーリーグと契約するかも?)というトンデモ事態が起きました。
ジャリエルは、中日の勝ちパターンとして想定されていた大切な投手。そもそもにして、2年契約をしているため、ここで姿を消されては、中日のシーズン成績のみならず、今後の日本プロ野球と外国人選手、キューバと日本との関わりにも大きく影響します。
ドラゴンズの立浪監督は「ジャリエルを探してください」と、なんとしてでも本人との話し合いの場を持つ姿勢。
ジャリエル……「色んな意味」で心配😱https://t.co/ZsvAD4WywQ
— 藍浦 (@yaqbasic26) March 29, 2023
立浪監督が敬語で「探してください」言うと、ある意味ますます怖い。
ジャリエル投手の動向によっては「制限選手公示」となる可能性も出てきました。
制限選手とは?
制限選手とは、野球協約第60条(2)において「いかなる球団においてもプレイできない」と規定された選手を指します。
制限選手として公示され、制限選手名簿に記載されると、以下のような処置がとられます。
- 他球団でのプレーが制限される
- 他球団への移籍が制限される
- 1日毎に年俸の300分の1を減額する
野球協約 第60条 (処分選手と記載名簿)
選手がこの協約、あるいは統一契約書の条項に違反し、コミッショナーあるいは球団により、処分を受けた場合は、以下の4種類の名簿のいずれかに記載され、いかなる球団においてもプレーできない。
(2)制限選手と制限選手名簿(レストリクテッド・リスト)
選手がその個人的事由によって野球活動を休止する場合、球団はその選手を制限選手とする理由を記入した申請書をコミッショナーに提出する。コミッショナーが、その選手を制限選手とすることが正当であると判断する場合、その球団の申請は受理され、コミッショナーによりこの協約の第78条第1項の復帰条件を付し制限選手として公示され、制限選手名簿に記載される。制限選手の参稼報酬については、1日につき参稼報酬の300分の1に相当する金額を減額することができる。なお、減額する場合は、上記の方法で算出した金額に消費税及び地方消費税を加算した金額をもって行う。
参照:野球協約 第60条(2)制限選手と制限選手名簿(レストリクテッド・リスト)
この野球規約は、選手の契約不履行や協約違反を防ぐため、あるいは違反した選手を処分するために設けられた決まりで、日米で統一されています。
日本だけでなくMLB(メジャーリーグ)や韓国、中国、台湾とも同様の協定を結んでいるため、制限選手公示がなされた場合、当該規約に沿い、違反した選手は処分されます。
今回の例で制限選手公示がなされた場合、ジャリエル投手はMLBと契約できなくなる。年棒も大幅に減俸され、2年間、他の球団に行けなくなる。
制限選手は支配下枠?
制限選手は、支配下枠に入ります。
よって、制限選手登録された場合、1軍に出場できる選手は「69人」でやりくりする必要が出てきます。
枠がひとつ潰れるのは痛すぎます……
過去の制限選手:日本プロ野球での前例
日本プロ野球における、過去の制限選手適用例は以下。やむ負えない事情の選手もいます。
東日本大震災発生の影響で来日できなかったケース(2011年)
- ブレント・リーチ選手(横浜ベイスターズ)
- ブライアン・バニスター選手(読売ジャイアンツ)
怪我が理由のケース
- ルルデス・グリエルJr.選手(横浜DeNAベイスターズ)
2020年、左手首が痛いとのことで来日せず。
亡命したケース
- オスカー・コラス選手 福岡ソフトバンクホークス
2020年2月、MLBとの契約を目的に亡命したと報道あり。来日せず。本人は契約無効を主張。
この名簿にジャリエルを加えずに済むことを祈る。