野球の完全試合について解説。
完全試合とは何か、意味や達成条件、ノーヒットノーランとの違いも。
歴代の完全試合達成記録や、完全試合に届かなかった「完全試合未遂」など、惜しかった前例も紹介しました。
完全試合とは
野球の完全試合とは、ランナーをひとりも出塁をさせずに0封で勝利することです。
デッドボールやフォアボール、味方のエラーによる走者もNG。
誰にも1塁を踏ませず、完全カンペキ、最終回までパーフェクトに抑えきった勝ち試合を「完全試合」と呼びます。
英語:perfect game
投手は試合に勝つまで、継投なしで投げ続ける必要あり
投手に完全試合が記録されるには、ひとりで試合の最後まで投げ切り、チームは勝たなくてはいけません。
途中で投手交代したり、延長戦に突入して引き分けに終わった場合は完全試合にカウントされません。
延長戦になった場合は、10回……11回……と、試合に勝利するまでパーフェクトを続ける必要があります。
完全試合の途中でコールドになった、没収試合になった場合も、完全試合の記録としては認められません。
パーフェクトに抑えきって、勝利するのが完全試合の必須条件!
完全試合とノーヒットノーランの違い
「完全試合」と「ノーヒットノーラン」の違いは以下の通り。
完全試合 | ノーノー | |
---|---|---|
失点した | × | × |
敗戦した | × | × |
引き分けた | × | × |
継投した | × | × |
ヒットで出塁された | × | × |
四球を与えた | × | OK |
死球を与えた | × | OK |
失策(エラー) | × | OK |
押し出し | × | × |
犠牲フライ | × | × |
振り逃げ | × | OK |
完全試合は、ランナーひとりも出せません。打者27人を抑えきれば、完全試合の記録樹立です。
ノーヒットノーランは、フォアボウル、デッドボール、味方エラーで出塁されるのはOK、ヒットによるランナーがNGです。
四死球やエラーでランナーを出しても、ホームを踏ませず失点ゼロに抑えればノーノー達成となります。
ノーヒットノーランとは
ノーヒットノーランとは、先発投手が継投なしで相手チームを無安打無得点に抑えて勝った試合です。
完全試合よりも達成条件は緩く、四死球やエラーによるランナーは認められます。
ノーヒットノーランもすごい記録です……!
引き分けの場合は、完全試合が樹立しない
試合に引き分けた場合は、完全試合が成立しません。
完全試合もノーヒットノーランも、「試合に勝利」しなくては記録されません。
完全試合は「振り逃げ」による出塁も×
振り逃げは、記録の上では「三振」です。
しかし、完全試合においては相手チームの打者を27人連続でアウトにし、ひとりの走者も出してはいけません。
振り逃げ成功で1塁を踏ませてしまうと、走者が出たことになり、完全試合が成立しなくなります。
振り逃げでも、ノーヒットノーランは記録される
完全試合やノーノーがかかっているときは、バントヒットを狙うのはご法度
日本のプロ野球では、完全試合やノーヒットノーランの記録がかかった試合において、対戦相手のチームが、完全試合やノーノーを崩すために「バントヒット」や「送りバント」をするのはよろしくない――という不文律があります。
プロ野球・暗黙のルールは以下の記事で解説中。
完全試合の難しさは?どれぐらいすごい?
日本プロ野球 (NPB) の完全試合記録は、2022年時点で「16度」の達成記録となっています。
日本プロ野球 (NPB) では、これまで16度記録されている
完全試合は投手さえ絶好調なら良いというわけではなく、味方のエラーがないなどの条件も加味されるため、チーム一丸となって勝ち取ります。
捕手の配球、野手の守備や援護点なども重要であるため、達成も難しく、難易度は超絶に高いです。
日本プロ野球 (NPB) では、レギュラーシーズンにおいて(完全試合16人を含む)87人が、合計98回達成。この他、ポストシーズンにおいて1人が1回達成
「安全試合」と「ノーヒットノーラン」は、どっちがすごい?
完全試合のほうが難易度が高いです。
「安全試合」と「完封」の違いは?
完全試合は、ひとりのランナーも出さずに、投手一人で投げ切って勝利しなくてはいけません。
完封は、ランナーを100人出しても、本塁を踏ませず0点に抑えて勝てばOKです。
完全試合 | ノーヒットノーラン | 完封勝利 | 完投勝利 | |
---|---|---|---|---|
ランナーを出したか? | × | ヒット以外OK | OK | OK |
失点した | × | × | × | OK |
敗戦した | × | × | × | × |
引き分けた | × | × | × | × |
継投した | × | × | × | × |
完全試合 歴代達成者|日本プロ野球
日本プロ野球の完全試合・歴代達成者は以下16名です。
※2022年時点/敬称略
投手 | 完全試合達成時の所属球団 | 記録日 |
---|---|---|
藤本英雄 | 巨人 | 1950年6月28日 ※NPB最年長記録(32歳1ヶ月) |
武智文雄 | 近鉄 | 1955年6月19日 |
宮地惟友 | 国鉄 | 1956年9月19日 ※最小投球数(79球) |
金田正一 | 国鉄 | 1957年8月21日 |
西村貞朗 | 東映 | 1958年7月19日 |
島田源太郎 | 阪神 | 1960年8月11日 |
森滝義巳 | 中日 | 1961年6月20日 |
佐々木吉郎 | 大洋 | 1966年5月1日 |
高橋善正 | 東映 | 1971年8月21日 |
八木沢荘六 | ロッテ | 1973年10月10日 |
今井雄太郎 | 阪急 | 1978年8月31日 |
槙原寛己 | 巨人 | 1994年5月18日 |
佐々木朗希 | ロッテ | 2022年4月10日 ※NPB最年少記録(20歳5か月) |
【pickup①】佐々木朗希投手の完全試合
/#佐々木朗希 投手と#松川虎生 選手が
ギネス世界記録™を達成
\■完全試合を達成したピッチャーとキャッチャーの最年少(合計年齢)
■ピッチャーの連続奪三振最多数この2つの記録は『ギネス世界記録2023』に掲載。#MarinesFF2022 で授与式を実施します。https://t.co/lUuXC5eR7M#chibalotte pic.twitter.com/1i8tvr5Chr
— 千葉ロッテマリーンズ (@chibalotte) November 10, 2022
2022年4月10日、ロッテ佐々木朗希投手がオリックス・バファローズ相手に完全試合を達成。
この試合は、
- 完全試合のNPB史上最年少記録(20歳5か月)
- バッテリーの松川虎生捕手も新人捕手(投手と捕手の最年少記録)
- 通算14試合目の登板で史上最速達成
- NPBタイ記録19奪三振
- NPB記録13者連続奪三振
……など、数々の記録を更新しギネス世界記録にも認定され、球史に残る名投手の記録として残りました。
【pickup②】中日ドラゴンズ 日本シリーズで完全試合目前の継投【山井→岩瀬】
【 #あの年の今日 】
2007年11月1日、中日ドラゴンズが53年ぶりの日本一に輝く🎉この試合、中日は「山井→岩瀬」による完全試合リレーで優勝を決めました。#dragons #npb
(写真は共同) pic.twitter.com/BLZXaszGC3— スポーツナビ 野球編集部 (@sn_baseball_jp) November 1, 2018
レギュラーシーズンではなく、日本シリーズで【継投による完全試合】により、日本一を手中に収めた2007年の中日ドラゴンズ。
この日、先発だった中日:山井大介投手は、8回まで完全試合、パーフェクトピッチングで日ハム打線を抑え込む。
最終回も、当然ながら山井がマウンドに上がると予想していたとき、中日・落合監督が下した采配は「ピッチャー、山井に代わりまして岩瀬」
この年、中日ドラゴンズは「岩瀬につなぐ野球」で勝ちパターン・勝利の方程式を構築し、守り勝つ野球をしてきたが、完全試合継続中の山井を降ろして普段通り、岩瀬をマウンドに送り込んだ采配に、観客一同唖然。この時点で山井の完全試合記録は消滅。
完全試合を引き継いだ岩瀬は、普段通りに投球し、いつも通りにゼロに抑え、中日は53年ぶり日本一達成。
完全試合未遂・未達成|惜しすぎた名投手の記録
完全試合達成の記録の外には「めちゃくちゃ惜しかった試合」「もう少しで完全試合だったのに」というゲームがあります。
完全試合がなんらかの事情で未遂に終わった記録は、NPBの参考記録とされ、違った形でレコードに残ります。
西武:西口文也投手
西口文也パーフェクト未遂
西武の西口文也投手は、「アウトあと1つ」「28人目の打者」に安打を打たれ、完全試合やノーヒットノーランを過去3度逃したという異例の記録を持ちます。
ちなみに、西口投手ご本人はインタビューで「(完全試合やノーノーを)逃してよかった。いま、こうしてネタにできるから」と語っていました。前向きです。
BS放送「球辞苑」にて「完全試合は、運です」とも語っていました。
中日:大野雄大投手
2022年5月6日の阪神戦で、中日・大野雄大投手は10回ツーアウトまでパーフェクトピッチング。
阪神の先発、青柳投手もこの日、中日打線を0封したまま延長戦へ突入しました。
完全試合がかかっている大野投手は延長戦でもマウンドに上がり力投を見せましたが、10回に佐藤輝明選手に中二塁打を打たれ降板。
めちゃくちゃ惜しい、完全試合未達記録となりました。
その後、大野投手の降板後10回裏、石川昂弥選手がサヨナラ安打を放ち完封勝利。
完全試合は逃したものの、味方チームの勝利に大喜びし、水を持ってマウンドに向かう大野投手の姿が「これぞエース」と話題になりました。
※【NPB記録】初回先頭打者から1試合29人連続アウト達成