プロ野球の育成選手とは?給料、契約、1軍成功例、支配下との違い

プロ野球の「育成選手」について、なるべく分かりやすく解説しました。

  • そもそも「育成選手」とは何か?
  • 育成選手とふつうの選手との違いは?
  • 育成出身で大成功した選手は誰?

育成選手のあれやこれやを知りたい方は参考にしてください。




プロ野球の「育成選手」とは

日本のプロ野球の「育成選手」とは、その名の通り、球団が「育成」を目的として契約している野球選手のことです。

「もう少し鍛えれば、1軍選手として活躍できそう」
「いまは怪我をしているけれど、怪我が完治したら戦力になるから獲得しておきたい」

などの理由で、育成後の活躍に期待し、球団に囲われた選手を「育成選手」と呼びます。

育成選手制度(いくせいせんしゅせいど)とは、日本のプロ野球(日本野球機構、NPB)において育成を目的として球団の選手契約枠を拡大する制度。
引用:育成選手制度(wikipedia)

育成契約とは

育成契約とは

育成選手として、球団と選手が契約することを「育成契約」と呼びます。

育成選手として入団する方法は、主に以下の2パターンです。

育成契約パターン①育成ドラフトで加入

毎年、秋ごろに行われる「ドラフト会議」の中で、育成選手を指名する「育成ドラフト」が行われます。

育成ドラフトで、未来に期待できそうな高卒選手や、野球経験は浅いけれど高いポテンシャルを秘めた未来のスターを獲得し、育成契約を結びます。

育成契約パターン②故障、リハビリ中で長期離脱する選手といったん育成契約

プロ野球は怪我や故障が起こりやすいスポーツです。ピッチャーであれば肩・ひじ・血行障害、野手は脇腹を傷めた、骨折などなど、長期的に前線から離脱する選手も出てきます。

現行のNPB規定では「故障者リスト」のような枠がないため、療養のために長期離脱する選手を、いったん育成契約とし、1軍で使える選手の枠を広げつつ、本人には「ゆっくり怪我を治してきて欲しい」と打診する場合があります。

2022年に育成契約となったオリックス・バファローズの富山投手は、支配下登録を外れ、育成契約を結んだことに対し「球団が1番良い形で配慮してくれた結果」と感謝の意を語っていました。

育成契約の例外・ルールの抜け穴

育成契約は本来「育成を目的として、球団の選手枠を拡大する制度」です。

しかしながら現状、フリーエージェント時の人的補償として、自チームの主要選手を他チームへ流出させないために、ベテラン選手や中堅選手をあえて育成選手として扱う、といった謎システムを稼働している例もあります。

2022年にベテラン選手(当時34歳)の梶谷隆幸選手が育成契約になり、年俸2億円で育成契約を結びました。

野球観戦、謎

年棒2億の育成選手、誕生……




育成選手と支配下選手の違い

育成選手と支配下選手の違い

テレビ地上波の野球中継で目にする選手は「1軍のプロ野球選手」です。残念ながら、育成選手は1軍の試合には出場できません。

1軍の試合に出場するには、球団に「支配下登録」される必要があります。

支配下登録選手と育成選手の違いは以下の通り。

支配下選手 育成選手
出場試合 制限なし 2軍戦のみ※
背番号 0~99番 3桁
最低年棒 420万円
(1軍選手は1600万円)
240万円
契約金 あり なし
※支度金はあり
1球団上限人数 70名 制限なし
契約期間 制限なし 入団後3年間(3シーズン)
以降1年毎に再契約

※2軍の試合で育成選手が出場できる上限人数は「5名まで」

参照:野球協約

育成→支配下登録できる期限は7月末まで

シーズンの始まりを育成選手として迎え、同年のシーズン中に支配下登録する場合の期限は「7月31日」です。

7月31日を過ぎ、8月に入った場合、育成選手の昇格機会は来年まで持ち越されます。

育成契約は入団後3年、移行1年ごとに再契約

球団と育成選手として契約できる期間は、入団後3年間(3シーズン)です。

3年を過ぎても、支配下選手として契約されなかった場合、当該選手は11月末日に自動的に自由契約選手になります。

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自由契約になった元育成選手を、もう一度育成選手として再契約するのはOK。この場合の契約期間は1年(1シーズン)となります。

参照:日本プロ野球育成選手に関する規約/第10条 (育成選手の在籍期間)

育成選手の給料事情!契約金や年棒は?

育成選手の給料事情!契約金や年棒は?

育成選手の年棒は、支配下登録選手の半分以下です。

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育成選手の年棒下限は240万円

暮らし向きは支配下選手と比べて厳しくはなりますが、たいていの若手育成選手は、球団の寮に入るため、食事や部屋代を使わず、トレーニングに打ち込めます。

以下、元ソフトバンクホークスの育成選手だった幸山選手のコメント。厳しい中でも、練習を必死にされていたようです。

「生活の面では、育成選手は全員寮に住み、寮費は3万円と安いうえに、3食分の食費も含まれていたので、支配下選手との格差はあまり感じませんでした。道具に関しても、スポンサーから年度始めにグローブやバットが支給されました。ただ、追加で頼むと、自腹で払う必要がありました。

また、育成3年間で支配下登録されなければ、ソフトバンクの場合はクビになります。育成は、支配下よりも下手だということで、朝早くから練習が始まり、練習時間は支配下に比べて長かったですね」

引用:元ソフトバンクホークス育成選手 幸山一大さん(FLASH)

育成選手は契約金なし。ただし支度金の支給あり

ドラフトで支配下選手として指名された場合、契約金が用意されますが、育成契約の場合、契約金の支給はありません。

ただし、育成選手(新人)には「支度金」として標準300万円が支払われます。

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「ドラ1入団・契約金1億」の金額を見たあとだと、300万円が少なく思えてしまいます……

育成出身で成功、活躍した選手

支配下登録選手と比べ、待遇や年棒、出場試合などに制限がかかる育成選手ではありますが、中には育成契約から大きく飛躍し、1軍レギュラーとして大活躍をした選手もいます。

育成出身から大成功する例は少ないですが、ゼロではありません! 一部の選手ですが、ご紹介をば。

千賀 滉大投手(福岡ソフトバンクホークス)

千賀 滉大ノーヒットノーラン

出典:福岡ソフトバンクホークス

ポジション 投手
育成ドラフト年 2010年
育成ドラフト順位 育成選手ドラフト4位
入団時の背番号 128
2022年 推定年俸 6億円
  • 「お化けフォーク」で三振の山を築く
  • ノーヒットノーラン(育成選手出身・初)
  • 投手三冠王(育成選手出身・初)
  • オリンピック代表(育成選手出身・初)
  • メジャーリーグ挑戦

甲斐 拓也捕手(福岡ソフトバンクホークス)

ポジション 捕手
育成ドラフト年 2010年
育成ドラフト順位 育成選手ドラフト6位
入団時の背番号 130
2022年 推定年俸 2億1000万円
  • 強肩「甲斐キャノン」で盗塁を刺しまくる
  • 日本シリーズMVP(育成選手出身・初)
  • オリンピック代表(育成選手出身・初)
  • ベストナイン、ゴールデングラブ、最優秀バッテリー賞など多数受賞

牧原 大成選手(福岡ソフトバンクホークス)

ポジション 外野手、内野手
投手・捕手以外すべて
育成ドラフト年 2010年
育成ドラフト順位 育成選手ドラフト5位
入団時の背番号 129
2022年 推定年俸 4500万円
  • ユーティリティープレイヤー
  • 足も速い
  • ヘアバンドの先駆者

周東 佑京選手(福岡ソフトバンクホークス)

ポジション 内野手、外野手
育成ドラフト年 2017年
育成ドラフト順位 育成選手ドラフト2位
入団時の背番号 121
2022年 推定年俸 3600万円
  • 俊足
  • ヒットを打ったはずなのに、気が付くと3塁にいる
  • 1塁が得点圏
  • シーズン最多50盗塁(規定打席未満で到達)
  • ユーティリティープレイヤー

石川 柊太投手(福岡ソフトバンクホークス)

ポジション 内野手、外野手
育成ドラフト年 2013年
育成ドラフト順位 育成選手ドラフト1位
入団時の背番号 138
2022年 推定年俸 1億2000万円
  • 最多勝利
  • 最高勝率
  • スピードアップ賞
  • オリックスキラー

山口 鉄也投手(読売ジャイアンツ)

ポジション 投手
育成ドラフト年 2005年
育成ドラフト順位 育成選手ドラフト1位
入団時の背番号 102
2022年 推定年俸 3億2000万円
  • 風神スライダー
  • 入団時推定年俸240万円
  • 育成枠出身選手初の年俸1億円
  • 2014年シーズンオフの契約更改で3億2000万円
  • セ・リーグ新人王
  • 最優秀中継ぎ投手3回

松原 聖弥選手(読売ジャイアンツ)

松原 聖弥選手(読売ジャイアンツ)出典:DAZN

ポジション 外野手
育成ドラフト年 2016年
育成ドラフト順位 育成選手ドラフト5位
入団時の背番号 009
2023年 推定年俸 3100万円
  • シーズン最多本塁打(育成選手出身・初)
  • シーズン2桁本塁打達成(育成選手出身・セリーグ初)

宇田川 優希投手(オリックス・バファローズ)

ポジション 投手
育成ドラフト年 2020年
育成ドラフト順位 育成選手ドラフト3位
入団時の背番号 013
2023年 推定年俸 1700万円
  • とにかく球が早い
  • フォークは落差もある
  • 2020年ドラフト→2021年支配下登録
  • 2022年クライマックスシリーズで2試合無失点
  • 2022年日本シリーズで7戦中4試合に登板
  • 計5回2/3を投げて10奪三振で無失点、1勝2H
  • 2022年オリックス優勝「影のMVP」
  • オフは「芦屋のマダム」として活躍(なぜ……