野球の「防御率」について、なるべく分かりやすく解説!
- 防御率とは、そもそも何か
- 数値が低いほうがいいと言われるのはなぜか
- 防御率の計算方法
- 防御率の目安(数値がいくつの投手が一般的か?
- 防御率の歴代ランキング ――など。
防御率とは
防御率(ぼうぎょりつ)
英語:Earned Run Average(略称:ERA)
防御率とは「投手(ピッチャー)の能力を評価するために使われる数値」です。
ひとりの投手が1試合(9イニング)投げたときに、何失点で抑えられるか? を計算した数値が「防御率」となります。
例①:「防御率2.95」の投手→1試合を完投したときに3失点未満に抑えてくれる投手!
例②:「防御率7.02」の投手→1試合を完投したときに7失点する投手……( ノД`)
失点は少ないに越したことはないため「防御率は低ければ低いほうが良い」とされます
防御率の計算方法
防御率の計算方法(計算式)は、【防御率 = 自責点×9÷投球回数】です。
防御率 = 自責点×9÷投球回数
※投球回数が分数(1/3 2/3)になる場合は、分数部分も計算に入れます。
防御率の計算【実例】
1例として、元中日ドラゴンズの守護神、岩瀬仁紀投手の通算防御率を計算してみましょう。
参照:岩瀬 仁紀(中日ドラゴンズ) | 個人年度別成績NPB
防御率計算にあたり、欲しいデータは以下2点。
- 自責点 253
- 投球回 985
計算式は【防御率 = 自責点×9÷投球回数】
- 防御率 = 自責点×9÷投球回数
- 防御率2.311675126903553= 自責点253×9÷投球回数985
防御率は2.311675126903553と計算されました。
このままだと、小数点以下が長くてややこしいため、小数点以下2桁で表示できるよう、四捨五入します。
防御率2.311675126903553 →防御率2.31
結論、岩瀬投手の通算防御率は「2.31」という計算になりました。
【中日】
▼ 岩瀬仁紀・通算成績
登 板:1002
勝 利:59
敗 戦:51
セーブ:407
奪三振:841
防御率:2.31#dragons pic.twitter.com/epI5nJEMPU— ベースボールキング⚾🥎 (@BaseballkingJP) March 2, 2019
1002試合登板、407セーブ、防御率2.31……(エグい)
防御率の計算ツール
防御率は、ふつうに電卓やそろばんでも計算できますが、防御率計算向けのツールを使うのも便利です。
味方のエラーによる失点は、防御率に影響しない
防御率は、投手の「自責点」で計算します。味方のエラー(失策や捕逸など)が失点につながった場合は、投手の責任にカウントされません。
よって、チームメイトのエラーで失点した場合は、投手の防御率に影響しません。
※自責点やエラーか否かは、プレー状況や公式記録員の判断にもよります。
関連記事:野球「自責点」をわかりやすく解説!意味、定義、失点との違い
イニング途中で走者を塁に残して投手交代した場合:交代前の投手の責任になる
投手交代時の、防御率計算について。例えば、以下の状況の場合。
- イニングの途中に継投。「A投手」から「B投手」ピッチャー交代した
- 継投「前」のA投手が、ランナーを出していた
- 継投「後」のB投手が、打たれてランナーを返してしまい、失点した
――このとき、自責点がカウントされるのは「投手交代前のA投手」です。
人の出したランナーを返しても、後続投手の防御率には影響なし
1アウトも取れずに降板したピッチャーの防御率は「99.99」と表示
防御率の計算時は「投球回数(アウトを取った数)」を使用します。
ですが、マウンドに上がったものの、ランナーだけ出して1アウトも取れずにピッチャー交代、次の投手がランナーを返した場合「投球回数は0」です。
この場合、0は割り算できないため、防御率は無限大とみなされ、野球中継の表示では「防御率99.99」と表示されます。
防御率、数値の目安
「防御率が低いほうが良いのは分かった」
「……だが、平均的な数値の目安がわからない!」
という場合に備え、防御率の数値の目安(ざっくりした基準)を紹介します。
防御率 | すごさ |
0点台 | 球界の至宝 |
1点台 | 超エース、侍JAPAN確定 |
2点前半 | エースピッチャー |
2点台後半~3点台 | 1軍投手 |
4点台 | がんばってください |
5点台 | どこか痛いの? |
参考:最優秀防御率 山本由伸投手
2021年の防御率1.39
2022年の防御率1.68
先発投手は3点台以下、中継ぎ・クローザーは2点台以下が優秀
防御率は、イニングを投げれば投げるほど数値が下がるため、多くの回に登板する先発ピッチャーのほうが良いスコアになりやすいです。
よって、先発投手は防御率3点台以下、できれば3点切るくらいの率が欲しいところ。9回を投げ切って失点2に抑え込めば、チームの勝機が見えます。
いっぽうで、失点の許されない勝ちパターンの中継ぎ投手、抑え投手は、防御率2点台以下が必要。可能であれば0~1点台を求められます。
防御率の参考数値:歴代クローザーの防御率一覧
参考数値として、歴代クローザーの防御率一覧をば。
※引退した日本人投手 セーブ通算記録の上位4名。敬称略
投手名 | セーブ数 | 実働期間/年 | 登板数 | 通算防御率 |
岩瀬 仁紀 | 407 | 1999-2018 | 1002 | 2.31 |
高津 臣吾 | 286 | 1991-2007 | 598 | 3.20 |
佐々木 主浩 | 252 | 1990-2005 | 439 | 2.41 |
藤川 球児 | 243 | 2000-2020 | 782 | 2.08 |
防御率はあくまでも「指標」
防御率は、投手の能力を数値として知りたいときに有効ではありますが、絶対的な指標ではありません。
というのも、投球回数が少ないピッチャーは、1失点しただけでも防御率が跳ね上がり、逆に長いイニングを投げる投手の数値は、少しずつ下がる傾向があるためです。
ワンポイントリリーフで登板する投手が運悪く被弾し失点した場合「防御率77.5」など、二桁を超えるえげつない数値がはじき出されるケースもあります。
また、失点のしやすさは味方の守備能力や球場の広さによっても変動します。
ムダな失点を防ぎ「守り勝つ」のが得意なチームの投手陣は防御率が低くなる傾向。反対に、打たれても打たれても次の回で打ち返す攻撃型チームの投手陣は「防御率なんて知らんがな」で問題ないともいえます。
防御率 歴代投手ランキング
日本のプロ野球における、防御率歴代投手ランキングを一部紹介します。
※防御率の通算記録に登録されるには、通算2000投球回が必要です。
※敬称略
防御率通算記録 1点台
投手名 | 防御率 | 実働期間/年 | 投球回 | 自責点 |
藤本 英雄 | 1.90 | 1942-1955 | 2628.1 | 554 |
野口 二郎 | 1.96 | 1939-1952 | 3447.1 | 752 |
稲尾 和久 | 1.98 | 1956-1969 | 3599 | 793 |
若林 忠志 | 1.99 | 1936-1953 | 3557.1 | 786 |
*2022年度シーズン終了時
防御率通算記録(現役選手)2000 投球回以上
投手名 | 防御率 | 実働期間/年 | 投球回 | 自責点 |
岸 孝之 | 3.07 | 2007-2022 | 2307.1 | 786 |
金子 千尋 | 3.08 | 2006-2022 | 2025.2 | 693 |
内海 哲也 | 3.24 | 2004-2022 | 2007 | 722 |
涌井 秀章 | 3.57 | 2005-2022 | 2598 | 1031 |
石川 雅規 | 3.88 | 2002-2022 | 3037 | 1309 |
*2022年度シーズン終了時
最優秀防御率
最優秀防御率は、規定投球回に達した投手の中から、防御率がいちばん0に近かった投手に贈られるタイトルです。
規定投球回は、以下のように定められています。
- 1軍の規定投球回 = 所属球団の試合数 × 1.0
- 2軍の規定投球回 = 所属球団の試合数 × 0.8
過去12年最優秀防御率
年度 | セ・リーグ投手 | パ・リーグ投手 |
2010 | 前田健太(広島) | ダルビッシュ有(日ハム) |
2011 | 吉見一起(中日) | 田中将大(楽天) |
2012 | 前田健太(広島) | 吉川光夫(日ハム) |
2013 | 前田健太(広島) | 田中将大(楽天) |
2014 | 菅野智之(巨人) | 金子千尋(オリックス) |
2015 | K.ジョンソン(広島) | 大谷翔平(日ハム) |
2016 | 菅野智之(巨人) | 石川歩(ロッテ) |
2017 | 菅野智之(巨人) | 菊池雄星(西武) |
2018 | 菅野智之(巨人) | 岸孝之(楽天) |
2019 | 大野雄大(中日) | 山本由伸(オリックス) |
2020 | 大野雄大(中日) | 千賀滉大(ソフトバンク) |
2021 | 柳裕也(中日) | 山本由伸(オリックス) |
2022 | 青柳晃洋(阪神) | 山本由伸(オリックス) |
山本由伸投手、最優秀防御率投手賞受賞おめでとうございます✨🎉#山本由伸#Bs2022 #プロ野球 #NPB #ORIX pic.twitter.com/J4y3dkuVgS
— オリックス・バファローズ (@Orix_Buffaloes) October 3, 2022
最優秀防御率を複数年(複数回)受賞した投手
投手名 | 受賞回数 |
稲尾和久 | 計5回 |
工藤公康 | 計4回 |
菅野智之 | 計4回(現役) |
藤本英雄 | 計3回 |
金田正一 | 計3回 |
村山実 | 計3回 |
村田兆治 | 計3回 |
斎藤雅樹 | 計3回 |
前田健太 | 計3回(現役) |
山本由伸 | 計3回(現役) |
*2022年度シーズン終了時